Present |

2025.01.17

2024年もあっという間に半月が過ぎた。昨年からのプロジェクトがどれも大詰めで、ありがたいことに忙しく過ごさせてもらっている。そういえば年末、打ち合わせで八女へ足を運んだ帰り、初めて「うなぎの寝床」に寄った。存在は勿論前から知ってはいたが、九州を中心とした手仕事・メーカーの商品がこんなにも色々とあるのだなーと改めて思うことだった。その中で僕らの食指が動いたのがこれ。フランス人デザイナー、ポーリーン・デルトゥア有田焼のコーヒーカップ。手にとった実物が抜群に良かった。おそらく「高台」に東洋の器らしさを感じ取ってのアイデアながらも、凡庸にならず、ほどよく新しい空気も感じる。湯呑みのような小ぶりなサイズも絶妙で、コーヒーやお茶は勿論、我が家では少量のスープなどもしっくりきている。釉薬が全体にかかった滑らかな底面と丸みは、手への収まりがとても心地良い。非常に絶妙かつ繊細な色味のグリーンで、買う前から日常に溶け込む絵が見えるようだった。2021年、彼女の訃報をSNSで知った。38歳だったという。以前からプロダクトを愛用していること以外、なんの接点も無い謂わば他人だが、こんなに才気溢れる人が若くしてこの世を去るのは、同じプロダクトデザイナーとしてやるせない寂しさがあった。たまに「生涯で、あとどれだけのモノを二人でデザインできるのだろう」と考えることがある。モノはすでに溢れ、作る必然性は薄れ、寧ろ作らない、別の選択肢が必然性を持つ時代。この先自分たちにできることがあるのか漠然と不安になることもあるが、彼女のプロダクトを手にして、勇気を貰えた思いがした。「Present」という言葉に「現在」という意味が何故あるのか理由は知らないけれど、なんかこれはとてつもなく深いことなんじゃなかろうかと(勝手に)。心地良いデザインのカップを二人で使いながら「こんな仕事がしたいねえ」としみじみ感じ入る年末年始だった。今年はより一層、「いま」にフォーカスしてゆけたら。

迷ったティーカップのこちらのカラーリングも、これまたソーサーとの関係性が素晴らしく、またの機会に買い求めたいと思う。